BtoB営業では、決裁権を持つ役職者だけにアプローチすればいいと思われがちですが、実際には複数の役職レイヤーを丁寧に押さえていく“縦展開”が欠かせません。相手が担当者レベルでも、上司やその上の役職者に提案を広げていくことで、最終的な商談成立へとつなげることができます。
また、高い役職の方が相手でも、実際にサービスを使う担当者とも事前にコミュニケーションをとることで導入後のミスマッチを防ぐことができます。
本記事では、縦展開をスムーズに進めるための具体的なコツを紹介します。
1. 縦展開が必要となる理由
BtoBの商談では、最終決裁を行うのは役職者であることが一般的です。しかし、その上層部がゴーサインを出すためには、実際の業務を行う担当レベルの人が納得していることが重要となります。
担当者が「自分ごと」として価値を感じ、社内でもポジティブに話題を共有することで、上司やさらに上の役職者が「導入しても問題なさそうだ」と判断しやすくなるのです。
逆に、一人だけの合意では検討途中で承認が止まり、なかなか前に進まないこともあります。
そこで、早い段階から組織の“縦”の連携を意識し、複数レイヤーへ情報を共有していくことが不可欠です。
2. 担当者から上司、そのまた上司へ提案を広げる
担当レベルの人へ提案する際は、彼らのさらに上の立場の方にも提案する“枠組み”を設計しておくことが大切です。
具体的には、次のようなステップを意識しましょう。
- 担当者レベルへのヒアリング・提案
- 課題感や要望、運用イメージを十分に把握します。
- 担当者の仕事がどのように楽になるか、成果を出せるようになるかを提示します。
- 担当者が社内でプレゼンしやすい資料や情報を提供します。
- 担当者の上司(課長・部長など)への提案
- 担当者と協力して、上司へのプレゼン機会を作ります。
- 上司の視点(費用対効果)に合わせた提案を行います。
- さらに上の役職者(取締役・役員など)の段階へ
- 部長クラスがGOを出せる場合もありますが、企業によっては取締役以上の承認が必要な場合も多いです。
- 事前にどこまで承認が必要なのかを担当者や上司に確認し、確実に段階を踏むスケジュールを共有します。
こうした流れを想定しながら商談を進めると、社内稟議の進行がスムーズになり、導入の可能性を高めることができます。
3. 最初から役職が高い方と接触する場合でも、担当レベルの紹介機会をつくる
「役員クラスの方と直接お話しできれば、決裁が早いのでは?」と思う方も多いかと思います。
しかし、現場レベルの合意がないまま導入が決まってしまうと、後々「現場がついてこない」「実際には別のツールを使っていた」などのトラブルが発生するリスクがあります。
そのため、たとえ初回の提案が高い役職者の方でも、後日改めて担当者や実際に運用する部署の方とのお打ち合わせの機会をいただくようにしましょう。
現場の声を聞きながら、導入後の運用イメージを詰めていくことで、導入後のミスマッチを防ぐことができます。
4. 相手が高い役職の場合は、こちらも同じ役職者を同席させる
取締役クラスの方に提案する場合、こちらも同等の役職者を同席させることで、話がしやすくなります。
例えば、相手が課長クラスであれば、こちらも課長クラスの人物を同席させる。
取締役クラスなら、こちらも取締役クラスが同席するように工夫しましょう。
同じ階層同士であれば仕事観や責任範囲が近く、互いの“痛み”や“メリット”を理解しやすいというメリットがあります。また、相手も「現場レベルだけでなく、こちらの役職に見合った体制を敷いてくれる会社だ」と評価してくれる可能性が高まります。
5. 組織図や意思決定フローの把握を徹底する
縦展開を成功させるためには、相手企業の組織図や意思決定フローをどれだけ正確に把握できるかが鍵となります。
担当者の方に「この案件を決めるにはどなたがどのように承認されますか?」と遠慮なく確認しましょう。
むしろ、早い段階で確認しておくことで、提案タイミングや必要資料などを調整しやすくなります。
6. ロールプレイや事前準備で説得力を高める
複数の役職レベルへの提案を行う場合、さまざまな観点での質問や意見に対処する必要があります。
ロールプレイや事前準備で、想定される質問やネガティブな反応への回答をまとめておくと安心です。
- 担当者視点: 日々の運用はどうなるのか? 使い勝手やサポート体制は?
- 経営視点: コストパフォーマンスや投資対効果、部下の作業効率などの経営者目線でのメリット
- 中間管理職での点: 部下の担当者がどのように成果を出せるか。
それぞれの視点を想定しておくことで、どのレイヤーに対しても説得力の高い提案が可能になります。
7. 縦展開による顧客満足度向上とリピート受注
縦展開を徹底することで、その企業のさまざまな立場の人に製品・サービスのメリットを伝えられます。
導入後も「現場スタッフの使い勝手がいい」「上司が成果を正しく把握できる」「経営陣が投資対効果をきちんと得られる」という状態をつくりやすくなり、顧客満足度が高まります。結果として、他サービスの追加導入や他部署への水平展開、リピート受注やリテンション向上につながる好循環を生み出すことができるでしょう。
まとめ
BtoB営業で成果を上げるには、担当者から上司、そしてさらに上の役職者へと“縦展開”を進めていくことが欠かせません。最初から役員クラスと話ができる場合でも、現場の担当者との擦り合わせを怠らないことが重要です。
また、相手が高い役職者であれば、同等の役職を同席させるなど、こちらの体制も整えておくと良いでしょう。
最終的には企業の組織図や意思決定フローをしっかりと把握しながら、各レイヤーのメリット・デメリットを踏まえた提案を行うことが成功への近道です。縦展開をマスターして、商談成立後も長期的に顧客との信頼関係を築き上げていきましょう。
以上、「BtoB営業での縦展開について」でした。